Google広告のアカウント移管は「管理できる人を替える作業」と「広告費の支払い元を替える作業」が別物で、順番を間違えると配信停止や権限トラブルにつながります。
とくに代理店から事業主へ戻すケースでは、MCCの紐付けと請求設定の扱いを誤ると、移管したつもりでも相手が操作できる状態が残ります。
この記事は、移管の全体像から実務手順、つまずきどころ、引き継ぎ設定までを一本道で整理し、最短で安全に切り替えるための手引きとしてまとめます。
Google広告のアカウントを移管する手順
まずは「誰が操作できるか」「誰が支払うか」を切り分け、移管先に管理者権限を渡してから、請求先の変更やMCCの整理を進めます。
移管のゴールを先に言語化する
アカウント移管と一口に言っても、目標が「運用だけ引き継ぐ」のか「請求も含めて完全に所有を替える」のかで手順が変わります。
最初に、移管後に残したい関係者と、残したくない権限を紙に書き出すと判断がブレません。
広告主側の社内担当交代なら、MCCの構造はそのままでユーザー権限だけを入れ替えるのが最短です。
代理店切り替えなら、旧MCCのアクセスを外すところまでが移管完了だと定義すると漏れが減ります。
現状の支払い方式を把握する
請求の切り替え可否は、アカウントが自動支払いなのか、手動支払いなのか、毎月の請求書発行なのかで変わります。
管理画面の料金関連メニューで、現在の支払い設定と支払いプロファイルの状態を確認しておきます。
毎月の請求書発行を使う構成では、支払い元のリンク解除が即時の配信停止につながることがあるため順番が特に重要です。
不明な場合は、支払い設定の変更を受け付ける公式フォームを起点に、対象の設定を選ぶと迷いにくいです。
お支払い設定の変更、またはお支払いプロファイルのリンクリクエストは、請求に関する移管の入口として押さえておくと安心です。
移管先のGoogleアカウントを準備する
移管先は、日常的にログインしているGoogleアカウントを使い、共有メールや退職予定アカウントは避けた方が安全です。
本人確認や支払い情報の審査が絡む場合、アカウントの実在性や連絡先の一貫性が効いてくるためです。
複数人で管理するなら、個人アカウントを主担当にしつつ、バックアップ担当も同時に管理者へ入れておくと事故に強くなります。
移管当日の作業者は、必ず二段階認証を設定してから触る運用にしておくと、ロック時の復旧が早くなります。
ユーザーの管理者権限を付与する
移管先にアカウントへ入れる入口を作るには、まずユーザー招待で管理者権限を付与します。
管理画面のアクセスとセキュリティから、移管先のメールアドレスを招待し、権限を管理者に設定します。
招待はメールと管理画面通知の両方で受理できるため、移管先が受理したことを確認してから次に進めます。
ユーザー権限の追加や削除の操作は、公式ヘルプの手順に沿って行うと迷いません。
Google広告アカウントへのアクセス権を管理するは、移管作業の基本動作として参照しておくと手戻りが減ります。
MCCの所有者や紐付けを整理する
代理店運用ではMCCが介在することが多く、単にユーザーを追加しただけでは「実質的な所有」が移っていないケースがあります。
クライアントアカウントのオーナー権限や、どのMCCが管理者として紐付いているかを確認し、必要なら譲渡します。
オーナー権限の扱いは、管理者権限がないと変更できないなど制約があるため、現運用者と手順を握ってから進めます。
クライアントアカウントのオーナー権限についてを基準に、オーナー設定と譲渡の要否を判断すると混乱しにくいです。
請求先の変更を行う
請求も含めて移管する場合は、支払いプロファイルや支払い元アカウントの切り替えが要になります。
MCC配下で請求設定の移行機能が使える環境なら、予算関連メニューから請求先の変更を進められます。
内部移行と外部移行の選択が出る場合、移管先の支払い元が同一階層内か階層外かで選ぶ方向が分かれます。
クライアントアカウントのお支払い設定の移行を行うに沿って、該当する導線があるかを確認しておくと判断が速いです。
旧運用者のアクセスを段階的に外す
移管直後に旧運用者を全削除すると、緊急対応や情報照合ができずトラブルが長引くことがあります。
まずは移管先が配信状況や請求の状態を自分で確認できる状態を作り、問題がないことを確認してから権限を外します。
不要なユーザー、不要なMCCリンク、不要な支払い関連の閲覧権限を、影響が小さい順に整理すると安全です。
最終的に、旧運用者がログインしても操作できない状態になったことを画面で確認して完了とします。
移管パターン別に押さえる考え方
同じ移管でも、代理店から戻すのか、代理店へ渡すのか、社内で交代するのかで、最短ルートと注意点が変わります。
代理店から事業主へ戻す
このケースは「旧MCCから切り離す」と「請求を事業主へ寄せる」の二段構えになりやすいです。
移管先の管理者追加と、旧代理店の権限整理を先に終え、最後に請求の切り替えを実施します。
旧代理店が保有しているタグや計測設定が絡む場合、移管後に計測が落ちるリスクがあるため引き継ぎ項目を先に共有します。
- 管理者ユーザーの追加
- 旧MCCの紐付け確認
- 請求プロファイルの切り替え方針決定
- 計測の引き継ぎ範囲合意
事業主から代理店へ渡す
代理店に渡す場合は、事業主側が最終所有者として残るのか、代理店MCCをオーナーにするのかを最初に決めます。
長期的に代理店を変える可能性があるなら、所有は事業主に残し、代理店は運用権限だけにする設計が一般に扱いやすいです。
一方で、毎月の請求書発行など請求形態によっては、代理店側の支払い体制が必要になることもあるため例外もあります。
社内で担当者が交代する
社内交代では、アカウント構造は触らず、ユーザー権限と通知先の整理に集中するのが効率的です。
引き継ぎ漏れが出やすいのは通知メール、支払い管理者、本人確認の連絡先で、ここがズレると対応が遅れます。
交代後も一定期間は旧担当を閲覧権限で残し、緊急時の確認だけできるようにする運用も現実的です。
| やること | ユーザー権限の入替 |
|---|---|
| 優先度 | 高 |
| 影響 | 操作権限 |
| 注意点 | 通知先の更新 |
複数MCCを整理する
過去の代理店が複数いると、MCCの紐付けが残り続けて構造が複雑になります。
どのMCCが管理者になっているかを表で可視化し、現運用に不要なリンクを減らすだけでも事故率が下がります。
MCC階層内での移動操作が可能な場合は、管理者変更の機能で移し替えられるため、手順を確認して進めます。
MCCアカウント階層内でアカウントを移動するにある注意点のとおり、移動できないアカウント種別もあるため、該当時はサポート窓口への相談が安全です。
移管でよく起きるつまずきを先回りする
移管トラブルの多くは、権限不足、請求停止、本人確認の遅延、旧運用者のアクセス残りのいずれかに収束します。
管理者がいない状態を作らない
最悪の状態は、移管元も移管先も管理者が不在になり、誰も権限変更できない状況です。
管理者は最低2名にして、移管先の主担当とバックアップ担当が同時に管理できる形を維持します。
社内で役割が変わっても、責任者アカウントだけは恒常的に残す運用にすると安全です。
請求の切り替えで配信停止しない
請求書払いの構成では、支払い元とのリンク解除が即時に配信停止につながる場合があるため、切り替え前に新しい支払い元を用意します。
自動支払いの構成でも、支払いプロファイルの審査やカード認証で止まることがあるため、移管日より前にテスト決済の準備をしておきます。
切り替え当日は、配信ステータスと残高、支払いエラー通知の有無を短い間隔で確認します。
| 症状 | 配信が停止 |
|---|---|
| 原因候補 | 支払い元リンク解除 |
| 対策 | 新支払い元を先に設定 |
| 確認先 | 料金関連メニュー |
本人確認やビジネス情報の齟齬を潰す
アカウントによっては本人確認や事業者情報の提出が求められ、情報が不一致だと処理が止まります。
移管先の名義、住所、請求先情報が現状とどう違うかを事前に把握し、変更が必要なら一括で整える計画にします。
運用だけ移管して請求は変えない方針なら、本人確認の提出主体がどちらになるかも先に決めておくと混乱を減らせます。
- 名義の一致
- 住所の一致
- 連絡先の一貫性
- 提出書類の準備
旧運用者の操作余地を残さない
移管後に「まだ代理店が触れる」状態が残るのは、ユーザー権限の削除漏れか、MCCリンクの残存が原因になりがちです。
まずユーザー一覧を見て、不要なメールアドレスが残っていないかを確認します。
次にMCC側の紐付け表を見て、現運用以外のMCCが管理者や所有者になっていないかを確認します。
最後に、支払い関連の閲覧権限や請求管理者の設定も見直し、請求の承認メールが誰に届くかを確定させます。
移管後に優先して引き継ぐ設定
権限と請求が切り替わっても、計測や連携が落ちると運用の成果が正しく見えなくなり、改善判断が遅れます。
コンバージョン計測を再点検する
移管直後は、コンバージョンが急にゼロになるなど、計測の断絶が最初に表面化します。
タグの設置先、計測方式、主要CVの発火条件を整理し、移管後も同じルートで計測できているかを確認します。
計測の担当が代理店側ツールに依存していた場合は、事業主側のタグ管理へ移行するなど、所有を明確にします。
- 主要CVの発火
- 重複計測の有無
- 計測遅延の傾向
- 除外設定の継続
Googleアナリティクス連携を整える
GA4連携やオーディエンス連携は、権限が変わると見え方が変わり、共有が外れることがあります。
リンク状態を確認し、運用に必要な閲覧権限と編集権限が移管先に揃っているかを見直します。
分析の指標が広告側とGA側で食い違う場合は、参照元の定義やアトリビューション設定も合わせて確認します。
| 連携先 | GA4 |
|---|---|
| 目的 | 成果計測 |
| 確認 | リンク状態 |
| 注意点 | 権限の継承 |
タグ管理の所有を明確にする
GoogleタグやGTMの管理権限が代理店側に偏っていると、移管後の改修が止まります。
タグの管理画面に誰がアクセスできるかを確認し、必要なら事業主の管理者を追加します。
運用の自由度を確保するなら、事業主側にタグの所有を寄せ、代理店は作業権限として参加する形が扱いやすいです。
Merchant Centerなど周辺プロダクトも見直す
ショッピング広告やP-MAXで商品フィードを使う場合、Merchant Centerとの連携が運用の中核になります。
移管後に承認が外れたり、フィード更新が止まったりすると配信量に直結するため、関連アカウントの権限も同時に確認します。
とくに複数の担当者や代理店が関わる場合は、誰がどの権限を持つかを表で可視化してから整理すると安全です。
- Merchant Centerの管理者
- 商品フィードの更新者
- リンク済み広告アカウント
- 診断の通知先
データと資産の扱いを誤解しない
移管は「アカウントそのものを引き継ぐ」作業が基本で、別アカウントへ“履歴ごと移す”こととは性質が違います。
配信履歴はアカウントに残る
同一アカウントのまま権限や請求を替えるなら、過去のキャンペーン履歴や学習データは基本的に残ります。
そのため、運用の継続性を優先するなら、アカウントを作り直さずに移管できる形をまず検討します。
一方で、法務や請求の都合で名義を完全に分けたい場合は、アカウント新設が必要になることもあります。
別アカウントへ構成をコピーする
新アカウントへ移す必要がある場合は、キャンペーン構成をコピーし、設定の差分を埋める作業が中心になります。
このとき重要なのは、計測、オーディエンス、除外、ポリシー関連の設定が抜けやすい点です。
コピー後は、配信前に最低限の設定を一覧化して突き合わせ、想定外の配信や無駄クリックを避けます。
| 移すもの | キャンペーン構成 |
|---|---|
| 移りにくいもの | 学習の蓄積 |
| 注意点 | 除外設定 |
| 確認 | 計測連携 |
レポート共有を整備する
移管後は、誰がレポートを作り、誰が意思決定するかが変わるため、見える化の導線を作り直します。
管理画面のユーザー権限だけでなく、Looker Studioなど外部レポートの閲覧権限も同時に整備します。
旧代理店が作成したレポート資産を引き継ぐなら、編集権限の移譲とデータソースの所有者も確認します。
- 週次レポートの閲覧者
- 編集できる担当
- データソースの所有
- 通知の送信先
クリエイティブ素材の所在を揃える
画像や動画などの素材が代理店管理のDriveやツールに散らばっていると、改善施策が止まります。
素材の保管場所、利用許諾、編集データの所在を整理し、事業主側の共有ストレージに集約します。
広告アカウント内に残る素材と、外部にある元データを分けて管理すると、更新時に迷いません。
サポートに頼るべき場面と進め方
請求やMCC移動は制約が多く、画面だけでは完結しないケースがあるため、公式の問い合わせ導線を使う判断が重要です。
お支払いプロファイルの変更を申請する
支払い者や請求先を切り替えたいのに管理画面の導線が出ない場合、公式の設定変更フォームから申請するのが現実的です。
申請では、現状の支払い設定、移管先の情報、連絡先、必要に応じて会社情報などの提出が求められます。
フォームはケース分岐が多いので、目的が「支払い方式の切り替え」なのか「課金設定の更新」なのかを取り違えないように進めます。
お支払い設定の変更、またはお支払いプロファイルのリンクリクエストを起点に進めると、必要情報の抜けを減らせます。
MCC階層外への移行が必要になる
移管先が別のMCC階層で、外部移行に該当する場合は、支払い元の扱いも含めて複雑になります。
また、アカウント種別によっては管理者変更の操作で移動できず、サポート対応が必要になることがあります。
自力でリンク解除を先にやると配信停止になる可能性があるため、移行手順を確定してから触るのが安全です。
MCCアカウント階層内でアカウントを移動するの注意点を踏まえ、移動できない条件に当てはまるかを先に確認します。
移管当日に優先する判断軸を決める
当日は作業が詰まりやすいので、「配信を止めない」「請求を止めない」「操作権限を確保する」の順で優先順位を固定します。
まず移管先の管理者ログインが通ることを確認し、次に配信と請求の正常性を確認し、最後に旧運用者の権限整理へ進みます。
緊急時に戻せるよう、移管前の状態をメモし、どこまで触ったかを時系列で残すと復旧が速いです。
| 最優先 | 配信の継続 |
|---|---|
| 次点 | 請求の正常化 |
| 最後 | 権限の整理 |
| 記録 | 時系列メモ |
移管を終えたら確認したい要点
移管直後は、移管先が管理者としてログインでき、配信が継続し、請求エラーが出ていないことを最初に確認します。
次に、旧運用者のユーザー権限とMCCリンクが整理され、必要な人だけが必要な範囲で操作できる状態になっているかを確認します。
最後に、コンバージョン計測、GA4連携、Merchant Centerなど周辺連携が維持され、レポート共有まで含めて運用が回る形になっていれば移管は完了です。
この順番を守るだけで、Google広告の移管は「配信停止」「請求停止」「権限トラブル」の三大事故を避けながら、短い時間で安全に進められます。

